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SORATOMO座談会~葬儀について~

皆さん、「当事者の声」はお読みになりましたか?

「当事者の声」は赤ちゃんとお別れした当事者の体験を記した当サイトの人気コラムです。「当事者の声」では実際に赤ちゃんとお別れした時のママや赤ちゃんの状況を鮮明にお伝えしていますが、今回は少し視点を変え、生まれた赤ちゃんの「葬儀」についてご紹介します。

突然赤ちゃんとのお別れを迎えることになったとしたら、不安要素は尽きないでしょう。

その中の一つに、出産後すぐに待ち受ける「葬儀」への不安があります。

いつやるの? どうやって手配する? 誰を呼ぶ? やっておかないといけないことは?

今回のコラムでは、赤ちゃんとのお別れという精神的な負担と出産による身体的なダメージを抱えながら、大切な赤ちゃんの「葬儀」に参列したその経験を当事者のママ三人を迎え、座談会形式でお伝えします。

座談会参加者

裕子さん 37週で常位胎盤早期剝離にて死産。赤ちゃんのサイズ【48cm/2394g】

梓さん 17週で染色体異常で後期流産。赤ちゃんのサイズ【11cm/22g】

由衣さん 35週で発育不全で死産。赤ちゃんのサイズ【34cm/502g】

※全員お名前は仮名

まず自己紹介をお願いします

裕子 :じゃあ私から。裕子です。私は、赤ちゃんとお別れした時期は10ヶ月。37週で常位胎盤早期剝離が原因で赤ちゃんとお別れをすることになりました。赤ちゃんは2394gで、48cmでした。普通に生まれてくる赤ちゃんよりも、ちょっと小さいくらい。普通に赤ちゃんっていう感じの状態でした。

梓 :梓です。私は17週なので、後期流産になります。多分12、3週時点で成長が止まってたので、11cm22gっていう本当に手のひらよりちょっと小さいぐらいの子でした。本当にお骨が残るか残らないかっていうギリギリのラインですね。

由衣 :由衣です。私は35週6日で心拍停止して、お別れしました。19週の終わりから発育不全と臓器異常があって。お腹の中じゃないと生きられないっていうのは言われていて、覚悟して過ごしていました。

裕子 :そうだったんだ…。

由衣 :妊娠は継続して、そのまま普通にお産というのを考えていたんですけど、お腹の中で心拍停止してしまったんです。大きさは502gで34cmでした。結構小さかったんですけど、手足とかはっきりしてて。朝一で火葬してお骨もしっかり残ってくれたので、それだけはよかったなと思ってます。

葬儀の手配はどのように行いましたか?

梓 :お二人は葬儀屋さんにお願いしましたか?

由衣 :私はお願いしてなくって。病院で赤ちゃんを入れる箱をいただいて、そのまま一緒に退院して、火葬しました。

裕子 :なるほど。

梓 :私も旦那に火葬届けを役所に出してもらって、「何時に火葬場に来てください」っていう連絡をもらう感じでした。裕子さんはどうでした?

裕子 :私は出産後の自分の状態が悪くて、ちょっと入院をしてたんです。入院期間中に病院の方から、葬儀屋さんとかいろいろやってくれるサービスのパンフレットをもらいました。

由衣 :そうなんだ、いい病院ですね。

裕子 :調べたり、自分でできる状態じゃなかったので、夫に全部頼んでて。あと私、姉がいるんですけど、姉が夫と協力して情報収集してくれて、その中で赤ちゃんに手厚いところを選んでくれたみたいです。

梓 :えー。すごいよ。優しいお姉さん。

由衣 :ね、優しい。

梓 :しっかり葬儀っていう形で行ったんですか?

裕子 :そうですね。火葬前に、例えばお花入れたりとか、ちょっとした赤ちゃんとの思い出作りとか。そういうのをやってくれるようなところでしたね。

梓 :すごい素敵。

裕子 :ね。私もそれは今振り返るとすごくよかった。ただ値段は結構したんじゃないかな。相場がわかんないけど。

梓 :私はしっかり葬儀っていう感じにはしてなくって。火葬の前に、お顔確認しましょうか?くらい。料金的な話をすると、火葬料だけみたいな状態だったので、そういう手厚いフォローはなかったです。由衣さんどうでした?

由衣 :あ、私も同じです。お金がかかってないって主人に聞いた気がします。

裕子 :かかってない? あ、そうなんだ。

梓 :行政の施設みたいなとこですか?

由衣 :役所経由で頼んで連絡してもらったので多分お金は取られなかったみたいです。どこか選ぶとかもなくて、「貴方はここです」って感じでした。

※市区町村や施設によっては、条件を満たしていると火葬料が無料になるところもあります。

梓 :あ、私も選んだりはできなかったです。事情を話して「朝一でお願いします」って伝えて、そこだけ配慮いただきました。裕子さんは……あ、そうかできなかったんだ。

裕子 :そうなんですよ。自分でやってない部分なんですけど、やっぱり朝一じゃないと骨が残らないから、朝一を予約したっていうのは聞きましたね。

火葬までの間に準備したこと、やったことなどありますか?

裕子 :ちなみにお2人は出産から火葬までは何日ぐらいありました?私は8日あったんですけど。

梓 :私は2日ですね。

由衣 :私は4日です。

裕子 :結構みんな違いますね。準備、どんなことしましたか?

由衣 :入院中に折り紙でいろいろキャラクターものとか折ったりして、ハートとか。それを一緒に棺に入れたりとか、赤ちゃんに手紙を書いたりしました。あとは気に入っているタオルとか。お花も考えたんですけど、その時ちょっと体力的にも精神的にも買いに行くのが難しくて……。

梓 :そう、私も一応折り紙で洋服とかペンギンとか折って。「お空でこれ着てね」とか「ペンギンさんと一緒に遊んでね」とか。一つ一つに願いを込めて棺に入れました。あとお手紙とお花と……あ、夫婦の写真も入れました。本当は洋服とか入れたら良かったんだろうなって思ったんですけど。私の場合サイズがなかったので、出来なくて。

裕子 :私は赤ちゃんが病院の冷蔵室にいたんです。入院期間中いつでも抱っこもできるし、沐浴もできるし、お部屋で一緒に過ごしたかったら過ごしてもいいって言われていて。目一杯それをやったっていう感じかな。足形も取ったり、抱っこしたりとか沐浴も2回ぐらいしたりお洋服着せたり、靴下履かせたりとかも全部やりました。

火葬当日、どんなことがありましたか?

裕子 :私は家族が集まってくれて、お別れをしました。でもその前に病院から葬儀屋さんに赤ちゃんを預けるっていうのがあって、その時が一番ピークって感じだったので、火葬場では気持ち的には準備できてましたね。入院期間中いろいろやってきたからこそ、スッとお見送りをしっかりしようって気持ちでした。

由衣 :私は義理の両親が来てくれて、一緒に行ってくれましたね。

梓 :二人ともご家族そろってみたいな感じだったんですね。私の場合は平日だったこともあって、私と夫二人だけでの火葬でした。

由衣 :そうなんですね。

梓 :朝一退院するタイミングで、棺に入ってる赤ちゃんを抱っこして、看護師さんたちと先生にも挨拶して……。結構ボロボロ涙出てましたね。

裕子 :そうだよね…。

梓 :火葬場のスタッフさんに産後すぐだから喪服じゃなくてもいいって言われたんですけど、なんとなくちゃんとしたいなと思って喪服でやりました。お顔の確認して、二人でボタンを押すっていう流れで。そのタイミングで火葬場のスタッフさんに対して、変に笑顔で対応しちゃうみたいな。なんだったんだろう。変にしっかりしなきゃ、とかいつもの自分でいなきゃっていうような、気持ちが出てしまっていて。

裕子 :その変な感じというか、ハイじゃないけど、なんかちゃんとしなきゃみたいなのはその時だけだったんですか?

梓 :あ、でも看護師さんとかそういう身内じゃない人と話すときは、ちょっとそういう気持ちがありましたね。誰にでも悲しさを出すっていう感じではなかったなぁって……。そう、なんか変だなって。変な心境だった。

裕子 :由衣さん、どんな感じ?

由衣 :火葬場ついた時は、悲しいけど涙は流さずにいようと思ってたんですけど、いざ扉が閉まった瞬間にもう悲しくなってしまって。泣きながら見送った感じですね。

裕子 :なんで泣かないようにしようと思ったんですか?

由衣 :うーん。義理の両親もいたので、ちょっとなって思うとこもあって。

梓 :あー、うんうん。それはわかる。やっぱこう変に気を張らなきゃっていう。ありますよね。

遺骨の管理、みなさんどうしてますか?

裕子 :皆さんどれぐらいお骨って残りましたか?

梓 :そうですね。私は多分一番皆さんと比べたら小さくて、少ないと思うので、えっと……つまようじの半分くらいの太さ?

裕子 :えっ。じゃあもう本当に細い。

梓 :うん、本当に細くて、多分ちょっと触ったらポロポロって崩れちゃうかな。どっちかというともう灰に近い感じで。骨壺は後で気に入ったものを用意しようと思ってたので、最初は仮の小さいケースに入れて、後で移し替えるっていうのを家でやりましたね。

裕子 :由衣さんはどれぐらいでした?

由衣 :そうですね。結構はっきり残りました。骨壺は三寸(※直径約9cm)のやつを買ったんですけど、それの半分よりちょっと少ないぐらい。

裕子 :どの部位の骨とかわかりましたか?

由衣 :わかる感じでした。結構はっきり。私も当日は仮のもので、気に入ったものを後で買いました。裕子さんは?

裕子 :私はもうほんとそれこそはっきり骨の形で。お箸で骨壺に入れるのを家族全員でやって、結構それでも余るというか全部入らなくて、残りを入れてふたを閉めて……って感じでしたね。

由衣 :うんうん。

裕子 :じゃあ、管理って今どうされてますか?

梓 :えー。管理かぁ…。カビ生えないようにされている方とかもいらっしゃいますよね。なにかされてますか?

裕子 :全くしてない。

由衣 :私も全くしてなくて、人によっては湿気ないように乾燥剤を入れるみたいなの聞いたことあって。どうしようと思うけど入れてない。

裕子 :そう、同じく。その情報は知ってるけれど、また骨壺開けて入れてっていうのもちょっと躊躇しちゃうというか。私は手元供養なんですが、みなさんどうしてますか?

梓 :同じく手元供養です。

由衣 :私も手元供養です。最初お墓に入れることもできるって話はあったんですけど、やっぱり近くに置いておきたいというか、近くにいたいなって。

梓 :うちは全然親族からそういう納骨とかいう話は一切なくって。私か旦那かどっちかがお墓に入るときに一緒に入れてもらえたらいいかなって思ってます。

裕子 :でも一方でずっと置いとくのか?っていう迷いはあるんですよ。ずっとここに置いとくのもどうかなって。

由衣 :確かに…。

梓 :お家の赤ちゃん用のスペースは皆さんどんな感じにしてますか?

由衣 :しっかりした仏壇という感じではないんですけど、可愛いおもちゃ見つけたら集めてます。ちょっと溢れてきてて、主人にちょっと多すぎって言われて今頑張ってやめてるところで。

梓 :ふふ、頑張ってやめてるんだ。うちは骨壺と、あとお地蔵さんのモチーフの人形を置いて、お花とミルク、おもちゃをちょっと飾ってあります。

裕子 :うーん、私も仏壇というより、お花を飾ったりとか、女の子だからやっぱお雛様も置いたりとか。季節感を出したりとか、完全に個人的な自分のね。

梓 :わかる。

裕子 :なんか自己満足にはなってるんですけど、やっぱり飾るのが楽しかったり、気持ちが大切ですね。

梓さん宅の赤ちゃんスペース

当時のことを思い出してみて、今感じることを教えてください。

裕子 :久しぶりというか、なんかこうね。思い出して改めていろいろ感じましたね。

梓 :ですね。今思い出してみて穏やかな気持ちで思い出せてるなぁって。座談会に参加されている皆さんのおかげもあるんですけど、景色だったりとか、こういうことしたなぁっていうのが、悲しいだけじゃない気持ちで今お話できているなっていうのが今正直なところですね。

由衣 :うんうん、多分これが亡くして数ヶ月とかだったら辛いかなって思うんですけど、やっぱ時間が経ったからこそしっかり話せるのかなって。

梓 :そうだよね。

由衣 :やっぱり息子に出会えたことってすごく嬉しかったので。悲しいけど、あったかい気持ちもあるっていう感じですね。

裕子 :そうですね。私もなんかこう話して、悲しいっていうよりかは何だろうな。あ、そうだったなぁっていう。今は本当に当時の記憶がいろいろ蘇ってます。

これから「その時」を迎える人へ伝えたいことはありますか?

梓 :両親・義両親含めて親族を呼ぶか呼ばないか問題はよく話し合ってほしいですね。私の場合は呼ばなかったタイプで、それは夫婦で決めたことではあるんですけど、皆さんみたいに家族みんなでっていうのも素敵だなと思いました。

裕子 :うん、こういうのは正解はないよね。

梓 :あとやっぱりやらなかった後悔は結構ずっと残るなっていうのは思ってて。私の場合、赤ちゃんのサイズ的に手指はあるけど、手形までは取れない。ほんとふにゃふにゃで取れなかったのでやりたかったなぁって後悔はありますね。事前にどういうことができるか知っておくことはやっぱ大事だったなって。

由衣 :とってもわかります。

裕子 :私は入院期間中にいろいろ経験させてもらえたっていうのが、今も思い出として自分の心の中でずっと残ってるし、心の支えみたいになってたりするから、病院には感謝の気持ちがすごくある。限られた時間の中でも、できることできないこと、いろいろあるけど後悔せずにね、やってもらえれたらいいのかなって。

由衣 :私は当時お花が用意できなくて。今でも棺にお花入れてあげたかったなっていう気持ちがあります。場所とか状況にもよるけど、入れられるものも実はいろいろあるんですよね。

裕子 :これから迎えるママたちには後悔せず、やりたいことを全部やって迎えてほしいなって思いますね。

 


座談会、いかがだったでしょうか?

今回は赤ちゃんの「葬儀」について体験談を紹介させていただきました。座談会に参加したメンバーも辛く悲しい「その時」を過去に経験し、当時の思いを忘れずに大切にしています。

赤ちゃんとの最期の時間を家族や病院関係者の協力のもと穏やかに過ごせた方がいる一方で、あれをやってあげればよかった、と後悔を残す方も少なくありません。

もしこのコラムを読んで、これから「その時」を迎えるママの後悔が一つでも少なくなれば幸いです。

お別れまでの赤ちゃんとの過ごし方に正解はありません。やらないといけないこと、やってはいけないこともありません。

一人一人のママが自分にとって最良のお別れの形を迎えられることを願っています。


著者(取材・文=SORATOMOライター 神笠あや)

 


この記事は、2024年3月に取材した際の情報で、現在と異なる場合があります。

当事者の経験談を元に構成しており、同じお別れを経験した方に当てはまるものではありません。

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