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出産費用や収入の不安の解消方法

赤ちゃんとのお別れに直面した際、不安なことの1つとして、分娩や手術にかかる費用負担や働けない期間の収入の減少など、お金に関することが挙げられます。
ここでは、分娩などにかかる費用の給付制度や、働けない期間の収入を補う制度について説明していきます。

分娩にかかる費用は、帝王切開などの一部を除き、公的医療保険(健康保険証を提示して医療費が3割負担となる医療保険)の対象外で、全額自己負担になります。
お金に関する話や手続きの中に出てくる「社会保険」という言葉に混乱する方も少なくありません。

まずは、こちらから「社会保険とは」の項目を再度確認してください。

お金を受け取る

出産育児一時金

【概要】
出産に要する経済的負担を軽減するため、一定の金額が支給される制度です。

【対象者】
社会保険の被保険者・被扶養者、または国民健康保険の被保険者のうち、妊娠4ヶ月(12週)以降に分娩をした方(死産、流産、人工流産(経済的理由によるものも含む)も対象となります)

【支給額】
妊娠22週未満: 子1人につき 48.8万円
妊娠22週以降: 子1人につき 50万円
※多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。

【受け取るまでの流れ】
申請するには以下の3つの方法があります。

■直接支払制度

妊婦と代理契約をした医療機関等が、妊婦に代わって保険者に一時金を申請し、妊婦を経由することなく、保険者から直接受取をする制度です(保険者が申請手続きを行うため、妊婦本人の手続きは必要ありません。保険証を医療機関等に提示のうえ、医療機関等の窓口において、出産育児一時金の申請・受取に係る代理契約を締結してください)。
まとまった現金を用意する必要がないことがメリットとして挙げられ、出産した多くの方がこの制度を利用しています。

なお、分娩費用が上記金額を下回った場合、保険者へ申請を行うことで差額を受け取ることができます。

(例)妊娠22週以降の正常分娩で費用が47万円だった場合、協会けんぽへ「出産育児一時金差額申請書」を提出すれば、差額の3万円が振り込まれます。
差額の申請期限は、出産の翌日から2年です。

■受取代理制度

出産予定日まで2ヶ月以内の方が、険者などに対して一時金を「事前に」申請し、医療機関等が代わりに受け取る制度です。
本人が事前に申請する点が直接支払制度と異なりますが、こちらも経済的負担が少なく、差額申請も可能です。
差額の申請期限は、出産の翌日から2年です。

■産後申請方式

分娩費用を一時的に全額自己負担で医療機関に支払い、その後一時金の申請をする方法です。出産の翌日から2年以内に申請してください。
里帰り出産で直接支払制度の手続きが間に合わない、クレジットカードのポイントを貯めたいなどの理由で選択されることが多いです。

医療機関等で記入する「直接支払制度 意思確認書/合意文書」などの書類に「直接支払制度を利用しない」ことを明記しておき、退院時に医療機関等で分娩・入院費用を全額支払います。
その後、保険者に「出産育児一時金支給申請書」を提出することで、上記金額が本人に振り込まれます。

出産手当金

【概要】
出産のために会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合、その間の収入を保障するための制度です。
出産日の42日以前(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以降56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。
※出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されます。

【対象者】
社会保険の被保険者のうち、妊娠4ヶ月(12週)以降に分娩をした方(死産、流産、人工流産(経済的理由によるものも含む)も対象となります)

ほとんどの場合、産休中は会社から給与は発生しないため、その間の収入を保障するための制度となります。そのため、被扶養者は対象外です。

また、この給付は原則として市町村国保にはありません。
一部の国民健康保険組合では支給していますので、加入先にご確認ください。

【支給額】
支給開始日以前の12ヶ月の給与を基準として「日額」が計算されます。その日額の3分の2が1日あたりの手当金です。

※会社の就業規則によって、産休中も一定の給与を支払うことが規定されている場合、出産手当金が減額されることがありますので、ご留意ください。

妊娠4ヶ月未満の人工流産の場合

出産育児一時金や出産手当金の給付はありません。
人工流産にかかる費用については、「母体保護」を目的としたものは公的医療保険(3割負担)の対象となります。
これに対し、「単に経済的な理由」によるものは保険適用となりません。

傷病手当金

【概要】
病気や怪我のために会社を休み、事業主から十分な報酬を貰えない間の収入を保障するための制度です。
メンタルの不調で休職する場合にも、適用されることがあります。
また、出産前の妊娠悪阻、切迫早産などで就業が困難な場合にも申請が可能です。

【対象者】
社会保険の被保険者。
所得保障の性質を持つものですので、被扶養者は対象外です。
また、この給付は原則として市町村国保にはありません。業種ごとの国保組合については、加入先にご確認ください。

【支給額】
過去12ヶ月の給与を基準として「日額」が計算されます。その日額の3分の2が1日あたりの手当金です。

【その他】
「休職が必要である」との医師の証明が必須で、申請書に医師の記載欄があります。申請書は勤務先に提出します。

長引く場合は1ヶ月ごとに申請することが一般的です。
まず、ご自身の勤務先の休職制度についてご確認ください。
制度が明文化されていなくても、勤務先に相談することで、状況によっては休職が認められる可能性があります。

お金を借りる

出産費貸付事業

【概要】
妊娠4ヶ月(12週)以降、急な分娩で出産育児一時金の直接支払制度の手続きが間に合わないなどの理由により、医療機関等に一時的な支払いをしなければならないことがあります。
出産育児一時金が振り込まれるまでの間、当面の支払いに充てるお金を借りたい方を対象にした制度です。なお、貸付額に利子はありません。

【対象者】
1.妊娠4ヶ月(12週)以降で、医療機関等に一時的な支払いが必要となった方
2.出産予定日まで1ヶ月以内の方

この制度は一部の市町村国保にはありませんので、お住まいの市町村にご確認ください。
業種ごとの国保組合についても、加入先にご確認ください。

<参考文献>
出産育児一時金の支給額・支払方法について|厚生労働省|2024.3.10取得
全国健康保険協会(協会けんぽ)|2024.1.29取得
(出産費貸付制度・子どもが生まれたとき・出産で会社を休んだとき・傷病手当金・病気やケガで会社を休んだとき・出産一時金について)


この記事はSORATOMO編集部が独自に調査し編集したものです
記事の内容は2024年4月の情報で現在と異なる場合があります
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